2014年7月30日水曜日

シナモンコーヒー

とにかく、それはカプチーノとかではなく、
堅いアニスを含むクッキーと
つけた傷の忘れかたを日常の空気に
溶かし込んでもなお、
傷跡をゆびでさぐり
そのかすかな起伏をさすり
想いにしようとし
やや軋む木枠の窓をあければ、
立て掛けられた箒の傍らで
横にたおれたままの手押し車のハンドルに
蔓をまきつかせ
昼顔の花が咲いている庭が見える
その裏口の出口にもなる入り口のエントランスには
扉を多少邪魔する程度の無造作に茂る
ローズマリーが歩くふくらはぎにさわる。
砂糖の代わりの追憶もさほど
コーヒーに苦さを加えるものではく
時はいろいろきざみもするが
いろいろふさぎもすることを
雄弁というほどでもない静けさで
時折、語りもして
椅子の上で風呂敷が
何かを隠したかったのか
ただほおりなげられたのかわからず
自然なひだをやわらかくつくり
このかたちの臆をほどくと
ひろがる宇宙にとまどいもするのだろうという
めんどくささと、することになっている決心が
一秒一秒の家財一式森羅万象に
届かない恋文を書いたりもする。


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