2014年8月2日土曜日

そして、ひとり乾杯とつぶやいた

乾杯をいわずに飲むひとり酒。

ありがちな句だ。ありがちすぎて、

だれもこないのに誰かを待つふりしたり

しながらピッチをあげようもんなら、

酔いは加速する。

しゃべる相手もいない。

店のオヤジは常連客と

下の話へと引き込もうとするが

なかなかその常連もその道にはのらない。

いつもの夕暮れがどうでもよくなる頃あいにまで

麻酔をかけられたようにひろがり、

プルーフロックのように敢えてなにかをしてみる気もおきない。




グラスの酒が底をついたときだけ

オヤジは「何かおつくりしやしょうか」と

上機嫌が鉢巻きしてデリケートゾーンの

痒みを抑えつつも小躍りして訊いてくる。

仕方ないこともないが「チェック」と

心でつぶやいてみるも

仕方なく「同じやつ」といってしまうほどの、

使い古されたパブロフな日々の縛り。

ピッチングフォームは型がなかなか収まることなく

中学で野球も引退するも、波の上の板には上手に乗れず、

欲望に扱われ慣れた陰謀論的な愛の手には

心地よく乗れる。




手元が狂い、醤油やソースの雫が

カウンターにちょいとこぼれようもんなら

おしぼりの角でさっと吹き汚れた角を下手に隠しては

チェックの瞬間を伺うが、

まだ、おやじの下ネタは着地点を見ず、

むだに熱くなり、

そして、ひとり乾杯とつぶやいた。























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