2014年8月8日金曜日

流木

「その仕掛けじゃ釣れねぇよぉ」って

親切心とマスター気分で

話しかけてこようものなら

「そうでしょうね」と応えるつもりだけど、

はなっから糸と糸の結び方も知らないし

ひどく固く結ぶことだけが純情だと想いこんでいる

ふしがあるので、その全て悟りきったかのような

受け答えも失礼かと想い、

「初心者なんで」のひとことで

含みを持たせて

そのマスターモードに火をつけるか

「そっきゃ」と自分の世界に引き戻ってくれるかを

あたりさわりない行間で濁そうとする。


「んじゃ、これ使ぇ」と仕掛け一式をさしだそうとするのであれば

「ぼくは釣りになどきたのではありません、

釣りをしている風にしにきたのです」とも大人げなくも言えず、

「いやぁ、どうも」と一旦受け取ってみるものの

「いやぁ、どうだかぁ」と濁りに濁った返しをして、

「ありがとうございます、でも初心者なんで」と

期待をかけられても困るし、そんなに夢中でもないからといった

雰囲気を漂わせ、「けっ、教える甲斐もねぇ」と想わせるのだ。

そして、捨て台詞のように、ぼくは心の中で

「ここの夢が流れてくるのを待っているんで、その時は手づかみでいきます」

ってなことを抜かして、酢昆布でも頬張る。

「頬張る」というのはいささか酢昆布にはふさわしくはないが

口にふくむと言った具合だ。

そんなこんなめんどくせぇシチュエーションになるかもと

リスクヘッヂやら、淡い恋心とかをそんな仮想敵国にもちつつ

視線の圧のかかる左横をちら見すると

苔むした強大な流木だったりするから

積乱雲の静けさととヒグラシの声が身にしみる


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