「その仕掛けじゃ釣れねぇよぉ」って
親切心とマスター気分で
話しかけてこようものなら
「そうでしょうね」と応えるつもりだけど、
はなっから糸と糸の結び方も知らないし
ひどく固く結ぶことだけが純情だと想いこんでいる
ふしがあるので、その全て悟りきったかのような
受け答えも失礼かと想い、
「初心者なんで」のひとことで
含みを持たせて
そのマスターモードに火をつけるか
「そっきゃ」と自分の世界に引き戻ってくれるかを
あたりさわりない行間で濁そうとする。
「んじゃ、これ使ぇ」と仕掛け一式をさしだそうとするのであれば
「ぼくは釣りになどきたのではありません、
釣りをしている風にしにきたのです」とも大人げなくも言えず、
「いやぁ、どうも」と一旦受け取ってみるものの
「いやぁ、どうだかぁ」と濁りに濁った返しをして、
「ありがとうございます、でも初心者なんで」と
期待をかけられても困るし、そんなに夢中でもないからといった
雰囲気を漂わせ、「けっ、教える甲斐もねぇ」と想わせるのだ。
そして、捨て台詞のように、ぼくは心の中で
「ここの夢が流れてくるのを待っているんで、その時は手づかみでいきます」
ってなことを抜かして、酢昆布でも頬張る。
「頬張る」というのはいささか酢昆布にはふさわしくはないが
口にふくむと言った具合だ。
そんなこんなめんどくせぇシチュエーションになるかもと
リスクヘッヂやら、淡い恋心とかをそんな仮想敵国にもちつつ
視線の圧のかかる左横をちら見すると
苔むした強大な流木だったりするから
積乱雲の静けさととヒグラシの声が身にしみる
0 件のコメント:
コメントを投稿